あえて「多数派と違う道を行く」という選択肢があります。
今回は、「天邪鬼のビジネスモデル」と称して、世の中の少数派に目を向け、
- 競争の少ないブルーオーシャンを見つける方法
- それをAIの力で進化させる手法
を考察してみます。
多数派が向かう方向とは逆に進むことで見えてくる、新しいビジネスの可能性とは?

マヨネーズといえば、
- キューピー(日本)
- ヘルマンズ(アメリカ)
などのブランドが知られています。
もし仮に、新しく「マヨネーズのビジネス」を考えるにしても、そうしたところと真っ向勝負するのは容易ではありません。
しかし世界には発想のひねくれた豊かな人がいるもの。
少々昔の話ですが、
「この世の中、マヨネーズ好きを自慢する人(マヨラー)は多い。企業もマヨネーズ好きばかりをちやほやしている。
そんな世の中だから、マヨネーズ嫌いの人は、さぞかし肩身が狭かろう。だったら自分は、マヨネーズ嫌いのためにビジネスをしよう」
と考えた人がいて、そういうビジネスモデルがアメリカにありました。
「マヨネーズ嫌い」をターゲットにした、コミュニティ運営のビジネスモデルです。
当然、マヨネーズを販売するようなビジネスモデルではありません。
- マヨネーズ嫌いのイベントの開催
- マヨネーズを「糾弾」する映画の上映
- アンチ・マヨネーズ雑貨の販売
などをしていました。
▽
もう1つ例を挙げると、インターネット全盛の世の中で
「定期的にインターネットから切り離されたい人たち」
というカテゴリに属する人が世の中にはいますね。
こうした人たちをターゲットにしたビジネスモデル、最近は普遍化したのか、あまりメディアに取り上げられることもなくなりましたが、当初は珍しくて話題になっていました。
いわゆる「デジタルデトックス」です。
たとえば、ネットが通じない場所(無人島や砂漠など)で数日を過ごす旅行プランがこれに該当します。
ネットから切り離されたい人たちの大部分は、インターネットを永久に放棄したいというわけではありません。
ときどき解放されたい。
インターネットを主戦場としたビジネスがどんどん広がり、多くの企業は「いかに人々をネットに縛りつけるか」を真剣に研究しています。
こうした、ネットに人を縛りつけるビジネスモデルが幅をきかせる一方で、その反対のことをしようという市場があり、そこで求められるビジネスモデルもありうるということです。
▽
この「天邪鬼モデル」、他にも応用が効きそうです。
- カフェイン断ちのためのカフェ(カフェなのにコーヒーなし)
- SNS非対応の宿泊施設(インスタ映え禁止。スマホ持ち込み制限)
- 電子書籍の時代に、あえて紙にこだわる書店
など、「あえて逆を行く」の精神が新しい価値になる時代。
「好きの裏には、嫌いがある」という発想は、ビジネスの幅を広げてくれます。

「好きの裏には嫌いがある」、この「天邪鬼のビジネスモデル」にも、AIが活躍する余地がありそうです。
▽
従来、市場調査といえば大多数の声を集めるものでした。
当然、少数派の声は埋もれがちです。
しかしAIを活用すれば、SNSやレビューサイトから「〇〇が苦手」「××に不満」といった少数派の声を効率的に収集できます。
たとえば、ChatGPTに「マヨネーズが嫌いな人たちが抱える日常の悩みを10個リストアップして」と指示すれば、ランチタイムの選択肢の狭さから友人との食事会での気まずさまで、具体的な課題が浮かび上がります。
これは新たな「天邪鬼ビジネス」の種になるでしょう。
この方法を試すと、たとえば「環境に優しいのに、見た目が地味すぎるエコ商品が嫌い」といった意外な声が見つかるかもしれません。
そこから「派手でゴージャスなエコ商品専門店」といった斬新なコンセプトが生まれる可能性があります。
▽
天邪鬼ビジネスの成功は、多数派との差別化をいかに魅力的に伝えるかにかかっています。
ここでもAIの出番です。
たとえば、「電子書籍の時代に、あえて紙にこだわる書店」を開業するとしましょう。
AIに「電子書籍の便利さと、それでも紙の本を愛する理由を対比させた店舗コンセプト文」を作成させれば、感情に訴えかける魅力的なストーリーが簡単に得られます。
さらに「紙の本だけを扱う書店のキャッチコピーを10案出して」と頼めば、思いもよらない切り口が見つかるかもしれません。
AIに「SNS非対応の宿泊施設の魅力をSNSで拡散するための投稿文」を作らせると、その矛盾した状況を生かした心憎いコピーも出てきます。
「あなたがここで見た景色は、写真では伝えられない。だから写真は撮れません」といった具合に。
▽
少数派のニーズには、本人たちも自覚していないことがあります。
AIとのブレインストーミングは、そんな「気づいていない不満」を発掘するのに役立ちます。
「カフェイン断ちカフェ」の例でいえば、AIに「カフェインレスドリンクに対する不満点と、その解決方法」を尋ねてみましょう。
すると「味が薄い」「選択肢が少ない」といった課題と共に、「発酵茶葉の深い香りを活かす」「スパイスの複雑さで満足感を高める」といった具体的なアイデアが返ってきます。
これを発展させて「カフェイン断ちカフェで出すべきドリンク5種類のレシピと、その魅力的な説明文」を作成させれば、メニュー開発の土台が整います。
さらに「カフェイン断ちを支援するための空間づくりのアイデア」と尋ねれば、内装や雰囲気づくりのヒントも得られるでしょう。
また、たとえば、「デジタルデトックス旅行」の企画を考える際、AIを活用したケースを想像してみましょう。
まず「デジタル機器がない生活で人々が感じる不安と、その対処法」をAIに尋ね、次に「デジタルデトックス中に提供すべき代替活動」のアイデアを出してもらう。
これをもとに、参加者の不安を和らげつつ充実感を高めるプログラムを組み立てることができます。
▽
少数派をターゲットにするビジネスの最大の懸念は「本当に市場性があるのか」という点です。
ここでもAIは頼もしい相談相手になります。
たとえば「マヨネーズ嫌いのコミュニティビジネスの収益モデルとして考えられるもの」と問いかければ、会員制、イベント収入、グッズ販売など複数の可能性が示されます。
さらに「マヨネーズ嫌いコミュニティの継続的エンゲージメントを高める方法」と尋ねれば、会員同士の結びつきを強める具体策も得られるでしょう。
AIは時に想定外の視点を提供してくれます。
たとえば「ダークレストラン」の事業計画を考える際、AIに相談すると「初期の目新しさが過ぎると再訪問率が低下する懸念がある」という指摘と共に、「定期的にテーマを変える」「他の感覚を刺激するイベントと組み合わせる」といった対策案が示されるかもしれません。
▽
「天邪鬼ビジネスモデル」は少数派を対象とするものですが、その中に、次の多数派に成長するものがあるかもしれません。
AIを使えば、そのパターンを見つけやすくなります。
たとえば「過去10年間で少数派だったが現在成長しているライフスタイルや嗜好」をAIに尋ねると、ビーガン食、リモートワーク、ミニマリズムなど、かつてはニッチだったものが挙がってきます。
次に「現在少数派だが今後成長する可能性のあるライフスタイル」と問いかければ、未来を先取りするヒントが得られるでしょう。
これを踏まえて「現在少数派だが成長が見込める市場と、そこでのビジネスチャンス」について深掘りすれば、単なる「逆張り」を超えた戦略的な事業構想が見えてきます。
▽
「アナログ体験専門店」というアイデアがあるとしましょう。
デジタル化が進む世の中で「あえてアナログな体験を提供する」店舗を作るとしたら、AIとのブレインストーミングでどんなアイデアが生まれるでしょうか。
まず「デジタル疲れを感じる現代人が求めるアナログ体験は?」と問いかけ、手紙を書く、レコードを聴く、フィルム写真を撮るなど20以上のアイデアを集めます。
次に「それぞれの体験の魅力と現代的な価値」を分析し、最後に「これらを組み合わせた体験型店舗のコンセプト」を検討します。
すると、たとえば「タイムカプセル・ラボ」のようなコンセプトが生まれるかもしれません。
店内では手紙やカセットテープに思いを記録し、指定した未来日に届けるサービスを提供する。
「SNSの即時性に疲れた人々が、時間をかけて熟成する思い出を作る」というコンセプトが、響く人には響く可能性があります。
AIとの対話がなければ、単なる「昔の良さ」を訴える古臭い店になっていたかもしれません。
現代的な価値を再定義できることが、こうしたコンセプト作りの成功の鍵になるでしょう。
▽
「天邪鬼のビジネスモデル」とAIの相性は悪くないようです。
でも「難しそう」と思わないでください。
実際のステップはシンプルです。
- 多数派の裏返しを探る:「〇〇が好きな人が多いが、嫌いな人はどんな不満を持っているか」とAIに聞いてみる
- 不満を具体化する:「その不満を抱える人々の具体的なペルソナと日常シーン」をAIに描写してもらう
- 解決策を考える:「その不満を解消するビジネスモデルのアイデア」をAIとブレストする
- 伝え方を磨く:「そのビジネスの魅力を伝えるストーリーとキャッチコピー」をAIに作成してもらう
- 持続可能性を検証する:「そのビジネスの収益モデルと長期的な課題」についてAIに質問する
特別な技術は必要ありません。
ChatGPT、Gemini、Claudeといった対話型AIで十分です。
▽
AIの活用法自体にも「天邪鬼アプローチ」が当てはまるかもしれません。
世の中の多くの人がAIを「業務効率化のツール」として使う中、あえて「非効率だけど価値のある使い方」を考えてみるのも面白いでしょう。
たとえば、
- AIに「わざと間違った提案をして」と指示し、その誤りを正すプロセスで新しい気づきを得る
- 「常識的ではない発想だけを出して」と限定し、型破りなアイデアを引き出す
こうした「逆張りの対話法」も、天邪鬼ビジネスモデルを考える際には効果的です。
どんな時代も、多数派の隣には少数派がいます。
そして少数派の声に耳を傾けることで見えてくる世界があります。
AIという新しい相談相手と共に、あなたの「天邪鬼ビジネス」を探してみませんか?