ご存知のように、AIコンサル工房では「専属AI」や「分身AI」の設計を行っていますが、
「専属AIと分身AIって、何が違うんですか?」
とよく質問されます。
どちらも「あなたのことを理解したAI」という点では共通しており、混同しやすいのも無理はありません。
じつは「専属AI」も「分身AI」も、頭の中は、だいたい同じです。
感覚的には、構造的な差はほんの1~2パーセントといったところでしょう。
それでも、表に現れる性格や機能は、大きく違います。
何がどう違うのか。
今回は、私が「ドラえもん理論」と勝手に呼んでいる思考実験を通じて、このあたりをご説明したいと思います。

ドラえもんという存在について、改めて考えてみましょう。
ドラえもんは、のび太にとって何者でしょうか?
ドラえもんは、のび太の悩みを聞き、一緒に解決策を考え、時には厳しく指導し、時には優しく励ます存在です。
のび太の性格や行動パターンを深く理解しています。
でも、のび太の代わりに行動する存在ではありません。
のび太の代わりに学校に行くわけではないし、のび太の代わりにジャイアンに立ち向かうわけでもない。
あくまで「相談相手」として、のび太の成長を支援しています。
ここで思考実験です。
もしのび太くんに 「きみとそっくりな分身がいるよ。ドラえもんと分身、どっちにする?」 と尋ねたとします。
のび太は分身を欲しがるでしょうか? ドラえもんをやめて、「もう1人ののび太」を選ぶでしょうか? |
おそらく答えは「ノー」です。
なぜなら、のび太が求めているのは「自分の代わり」ではなく、「自分を理解し、支えてくれる存在」だからです。
ドラえもんには四次元ポケットがついていますが、仮にそれがなかったとしても、のび太くんが選ぶのはドラえもんでしょうね。
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この思考実験から見えてくるのは、専属AIと分身AIの根本的な役割の違いです。
専属AI(インハウスAI)は、あなたの「相談相手」です。
あなたのビジネスや価値観を理解し、一緒に考え、時には新しい視点を提供し、あなたの思考を支援する存在です。
ドラえもんのように、あなたと対話を重ねながら、より良い解決策を見つけ出すパートナー。
でも、あなたではありません。「そっくりさん」でもない。
あなたについて詳しいですが、あなたとは違う。
そういう意味では、友人・相棒的なポジションです。
一方、分身AI(アバターAI)は、あなたの「そっくりさん」です。
あなたっぽく振る舞うことを目的とした存在です。
重要なのは「似ていること」。
あなたとの対話よりも、他者に対するプレゼンスに意味があります。

スモールビジネスオーナーの方々に適しているのは、「分身」ではなく「理解者」です。
1人で事業を営んでいると、重要な判断を迫られる場面で「誰かに相談したい」と思うことが日常的にあります。
しかし、事業の細かな事情や自分の価値観を一から説明するのは大変ですし、そもそも気軽に相談できる相手がいないことも多い。
そんな時に必要なのは、あなたの事情を深く理解し、
「それなら、こんな視点もありますね」
「以前おっしゃっていた○○の件とも関連しそうですが」
といった具合に、文脈を理解した対話ができる相手です。
つまり、ドラえもんのような存在。
つまり、専属AIのほうです。
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「技術的価値」と「対話価値」は、異なるものです。
分身AIの価値は主に「そっくり感」という技術的価値にあります。
映像や音声も含めて「本物らしく」振る舞うことで、「すごい!そっくり!」という驚きや話題性を提供します。
これは確かに魅力的ですが、じゃあ、「それで何をしたいのか」。
落ち着いて問い直すと、活用目的がけっこう曖昧であることがわかります。
一方、専属AIの価値は「深い理解に基づく対話」という実用的価値にあります。
そっくり感ではありません。
あなたの思考パターンや事業の背景を理解し、実践的または精神的なアドバイスや気づきを提供することが価値です。
スモールビジネスにとって、どちらがより求められるかは明らかでしょう。
もちろん、分身AIにも適切な活用場面はあります。
たとえば、
- 講師業の方が、自分のスタイルでの「代理講演」を実現したい場合
- 亡くなった方との思い出を形にしたい場合
「代理行動」や「存在の再現」が求められる場面では、分身AIの「そっくり感」が真価を発揮します。
ただし、日常的なビジネス課題の解決や意思決定支援においては、やはり「相談相手」としての専属AIのほうが実用的だということです。
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まとめます。
ドラえもん理論が教えてくれること:
私たちに必要なのは「完璧な自分のコピー」ではなく、「深く理解してくれる相談相手」。
分身AIは技術的な面白さはありますが、具体的な活用目的が明確でなければ、投資対効果は限定的。
スモールビジネスを営む方々には、毎日の課題解決や意思決定を支援してくれる「専属AI」という相談相手のほうが、適しています。