おこぼれのビジネスモデル

私(AIコンサル工房/吉村)は「ひとり創業」「スモールビジネス」専門のコンサルなので、良くも悪くも大それたことはあまり考えません(笑)。

ただ、大企業の動きや、世の中の大きな流れを近くで傍観し、

「あんなビジネスは成り立つんじゃないか」

「こんなビジネスはどうだろうか」

といった思考実験・思考訓練をするのは大好きです。

「おこぼれビジネス」の思考実験と言ってもいいでしょう。

「おこぼれビジネス」のよく知られた例をあげると、19世紀半ば、アメリカ西海岸に金鉱目当ての人々が世界中から殺到しました。

いわゆる「ゴールドラッシュ」。

あのジョン万次郎も、このゴールドラッシュに加わり、数か月間、金を採掘していたらしいです。

 

けれども、金を得た人は少数派で、ほとんどの人は金を見つけることができませんでした。

ゴールドラッシュでもっとも成功したのは一獲千金を夢見た鉱夫ではありません。

もっとも成功したといわれるのは、じつは洋服屋でした。

 

その洋服屋は、鉱夫たちの履くズボンがしょっちゅう破れることに目をつけ、破れにくい丈夫なズボンを開発しました。

もうお分かりかもしれません、ジーンズの「リーバイス」です。

 

「おこぼれビジネス」などと自虐的な表現をしましたが、リーバイスももともとは「おこぼれビジネス」だったわけです。

「おこぼれビジネス」もなかなか捨てたものではありません。

 

近年の例をあげると、タピオカがブームだったころ、当然ながらタピオカ店が濫立しました。

タピオカ店じたいは競争が激しく、みんなが潤ったわけではありません。

むしろ苦戦していました。

 

しかしその陰で、専用の太いストローがよく売れました。

ゴールドラッシュに比べれば地味な例ですが、「おこぼれビジネス」には違いないでしょう。

さて、このような「おこぼれビジネス」の発見において、最近私が注目しているのが生成AIの活用です。

たとえば、新たな市場やトレンドが生まれたとき、そこから派生する可能性のあるビジネスチャンスを見つけ出すのに、AIは驚くほど良いパートナーになってくれます。

 

私がよくやるのは、ChatGPTと一緒にブレインストーミングをする方法です。

たとえば、何らかの市場を指定し、その周辺で考えられるビジネスを洗いざらい列挙させると、AIは様々な角度から関連ビジネスを提案してくれます。

人間の思考は往々にして既存の経験や固定観念に縛られがちですが、AIは意外な視点で「おこぼれビジネス」の可能性を示唆してくれることがあるのです。

 

市場動向を分析するのにもAIを活用しています。

たとえば、特定の業界のニュースやSNSの投稿をAIに分析してもらい、トレンドの裏でどんなニーズが「満たされていない」かを探ることができます。

リーバイスが鉱夫のズボンの耐久性に着目したように、現代でも「困りごと」や「不便」は新しいビジネスのタネになります。

 

面白いのは、AIと対話していると、時として思いもよらない気づきが得られることです。

先日も、ある業界の動向についてAIと対話していたときのこと。AIが

「そのサービスを利用する人々の行動パターンに注目すると、実は○○というニーズがあるのでは」

と指摘してきました。人間の分析だけでは気づかなかったかもしれない視点でした。

 

もちろん、AIの提案を盲目的にそのまま鵜呑みにするものではありません。

大切なのは、AIを「アイデアの種を見つけるためのパートナー」として活用すること。

その種を、実際のビジネスとして育てていけるかどうかは、やはり私たち人間の経験と判断力が決め手になります。

 

私の経験では、AIとの対話は特に「市場の初期段階」で効果を発揮します。

新しい技術やサービスが登場したばかりの時期は、誰もが手探り状態。

そんなときこそ、AIとのブレインストーミングが新たな視点をもたらしてくれるのです。

 

結局のところ、「おこぼれビジネス」の発見は、観察眼と発想力が鍵を握ります。

AIは、その観察眼と発想力を補強してくれる、頼もしい相棒になってくれるのです。

リーバイスの創業者が現代にいたら、きっとAIをさんざん活用したことでしょう。