「やりたいことに集中できたら、もっと楽しめるのに」
そんなふうに感じたことはありませんか?
たとえば、旅行の計画。
旅そのものはワクワクするのに、準備や片付け、細かい調整に追われて疲れてしまう。
あるいはイベントの開催。
盛り上がったあとの後始末を考えると、楽しみきれない。
こうした「やりたくはないけれど、避けられないこと」は、ビジネスの種になります。

先日、オーストラリアの「ハングオーバー・ヘルパーズ」というビジネスの存在を知り、面白いと思ったので紹介します。
「ハングオーバー」とは、「二日酔い」のこと。
そしてこの会社は、その名の通り「二日酔いの救世主」。
パーティーの後片付け専門の清掃会社です。
こんなスローガンを打ち出しています。
「思う存分に騒いでください。後始末は当社に任せて」
シンプルながら強烈なメッセージですね。
世の中に清掃会社や家事代行サービスは数多くあります。
その中で「ハングオーバー・ヘルパーズ」は、パーティーの後片付けという「痛みポイント」に特化することで、明確な差別化に成功しています。
パーティー用の食器提供などの派生サービスも行いながら、顧客に「後のことは心配するな。思い切り楽しめ」と安心感を与えるビジネスモデルです。
ここではそれを「好きなだけ騒げのビジネスモデル」と呼ぶことにしましょう。
「好きなだけ騒げのビジネスモデル」は、「思う存分○○してください。後は私たちが何とかします」、すなわち、
- 顧客が本当にやりたいこと
- やりたくないけれど必要なこと
を明確に分離し、後者を引き受けることで価値を生み出すものです。
▽
この「好きなだけ騒げのビジネスモデル」は、業種を問わず応用が可能です。
重要なのは、顧客が「やりたくないけど必要なこと」を特定し、それを肩代わりすることで、「本当にやりたいこと」に集中させるという構造です。
たとえば、キャンプ用品のレンタルと設営・撤収を代行するサービスがあります。
キャンプ自体は楽しいものの、準備や後片付けが面倒という人は多いでしょう。
そこで、「手ぶらでキャンプ」を実現することで、「自然を楽しむ」という本質的な体験だけを顧客に残すことができます。
同じ構造はビジネス領域にも見られます。
スタートアップ向けの「バックオフィス代行サービス」は、経理・法務・人事など、創業者が本来やりたくないが避けて通れない業務を請け負うことで、創業者が「プロダクト開発」や「マーケット開拓」といったコア業務に集中できる環境を整えます。
飲食業でも応用例があります。
近年人気の「間借り営業」や「ポップアップレストラン」は、自分で物件を借りて内装工事をして…という初期投資を省き、「料理を作って提供したい」という本質に集中できる環境を提供します。
共通しているのは、「制約を取り払う」ことで「熱量を最大化する」仕組みがあるという点。
顧客が本当に求めているのは、完璧な段取りでも、完璧な準備でもありません。
その瞬間の「没入体験」や「成果」、「楽しさ」そのものです。
だからこそ、「面倒な部分はこちらで引き受けます」という提案には、大きな価値があります。
このモデルを考えるときに有効なのが、「顧客の行動の前後を観察する」という視点です。
- その体験の前に、何が面倒なのか
- その体験の後に、何が億劫なのか
そこにヒントが隠れていることが多いのです。
▽
「好きなだけ騒げ」型ビジネスの本質は、顧客の「不安・面倒・負担」を取り除き、「自由・喜び・本質的な体験」に集中させることにあります。
なかなか気づきませんが、私たちの周りにも、
「これが終わった後の片付けが大変で…」
「これをやるのは好きだけど、あの部分が面倒で…」
という会話が溢れているかもしれません。
「思う存分○○してください。後は私たちが何とかします」
この切り口を意識すると、新しいビジネスのアイデアが生まれやすくなる気がします。

AIを活用した「好きなだけ騒げ」型ビジネスモデルの作り方
「好きなだけ騒げのビジネスモデル」の本質は、「顧客の不安や面倒を肩代わりし、本当に楽しみたいことだけに集中させる」という、シンプルでありながら強力なものです。
では、このモデルをAIを使ってより現実的かつ面白いビジネスに進化させてみましょう。
たとえば、パーティー後の片付けを請け負う「ハングオーバー・ヘルパーズ」のようなサービスにAIを取り入れるとどうなるでしょうか?
AIは人間よりも正確に汚れや散らかり具合を把握でき、どこから手を付ければ効率が良いかを判断してくれます。
AI搭載のロボット掃除機を導入すれば、翌朝には何事もなかったかのように部屋がきれいになっている、なんて体験を提供できます。
しかし、AIの本当に面白い使い方は、データ分析やロボット化よりも、「顧客が面倒に思うことを発見する仮説」を立てることにあります。
ビジネスの種を見つけるとき、顧客に直接「どんなことが面倒ですか?」と尋ねようとします。
もちろん、尋ねればいいのですが、的確な答が返ってくるとは限りません。
自分のストレスや面倒を的確に言語化するのは、案外難しい。
そこでAIに助けてもらうわけです。
顧客のビジネスやサービスの概要をAIに説明すると、AIは「もしかするとこんな隠れたストレスや面倒があるのでは?」という仮説をいくつか提案してくれます。
もちろんこの段階ではあくまで「仮説」ですが、仮説がなければ話が始まりません。
あなたはその仮説を持って、顧客に「実はこんな面倒が隠れていませんか?」と質問してみるのです。
顧客が「まさにそれ!自分では気づかなかったけど、確かに面倒に感じていました」と反応してくれたら、大成功。
たとえばキャンプ場を経営している顧客がいるとしましょう。
AIは「もしかすると道具の収納が毎回難しくて面倒なのでは?」あるいは「チェックアウト時間が気になり、心からリラックスできていないのでは?」という仮説を立ててくれるかもしれません。
これを持って顧客に話をしてみると、「言われてみれば毎回収納がストレスだった!」といった共感を引き出し、新しいサービスにつなげるアイデアが生まれます。
AIを使った仮説立てなら、高度なITスキルは不要です。
直感的な操作でAIと対話をするような感覚でビジネスのアイデアを掘り起こすことができます。
あなた自身が仮説作りに悩む必要はありません。
AIが仮説を提供し、あなたは顧客との会話やアイデアの深掘りに集中できます。
つまり、こういうことです。
「思う存分アイデアを膨らませてください。面倒な仮説出しはAIが引き受けます」
AIと一緒なら、「好きなだけ騒げ」型ビジネスモデルが、より身近で楽しいアイデア創出に変わりますよ!