ひとりぼっちのビジネスモデル

日本にはいろんな「大臣」がいます。

内閣総理大臣をはじめ、厚生労働大臣とか、文部科学大臣とか、農林水産大臣とか、経済産業大臣とか、防衛大臣とか。

いろんな「大臣」がいます。

 

そのなかに「孤独大臣」がいることをご存じでしょうか?

孤独大臣とは

正確には「孤独・孤立対策担当大臣」といいます。

長寿化が進み「人生100年時代」などと言われる日本ですが、その背後には

 

- 孤独な人

- 孤立している人

 

がたくさんいて、それも増えており、社会問題になりつつあります。

政府もそれを軽視できなくなり、2021年に孤独大臣職を設置しました。

 

日本の場合、とくに中高年の男性が定年退職後に孤独化しやすいとされていますが、わかる気がします。

社会の変化

ある予想によれば、今から約15年後の2040年ごろの日本はこんなふうになっているといいます。

  • 65歳以上の人口→3割強
  • 15歳未満の人口→1割弱
  • ひとり暮らし世帯→4割以上
  • 独居老人→900万人超
  • 生涯独身→男性の3割以上、女性2割強

この予測は、現在の傾向を見る限り、むしろ控えめな数字かもしれません。

 

ではこれによって消費がどう変わるのでしょうか。

これまでは、主婦が消費の担い手となり、家庭単位で消費が行われていました。

しかしだんだんと、単独の個人が消費の担い手となり、個人単位での消費が急速に拡大しています。

孤独の多様化

「個人単位での消費の金額などたかが知れている」

と侮ってはいけません。

単独生活者はこれまでの「家族消費」を上回る消費をする傾向が、すでに顕著に表れています。

たとえば独身男性は、外食、教養娯楽、そしてデジタルコンテンツにお金を使います。

 

「孤独大臣」は孤独のマイナス面を問題視して設立されたポストですが、いっぽうで、

  • 1人の時間を積極的に楽しむ層が急増しています。
  • 物理的には孤立していても、精神的な充実を感じる人も増えています。
  • 必要以上のつながりを避け、選択的に1人の時間を確保する傾向も強まっています。

「孤独市場」という巨大市場

「孤独」は今、新しいビジネス機会を生み出す領域の1つになっています。

市場は大きく2つに分かれています:

  • 孤独に苦しむ人向けの「ソリューション市場」
  • 孤独を積極的に楽しみたい人向けの「エンタメ市場」

まだ多くの大企業は「家族単位での消費」という旧来の発想から抜け出せてないようですが。

 

そのため「孤独市場」は、スモールビジネスにとっての有望なブルーオーシャンとなっています。

特に以下の分野で新規参入の余地が大きいと考えられます:

  • 選択的独身者向けの、質の高い食事・住環境の提供
  • 趣味や学びを深める独習支援
  • 個人の時間を最大限に活用するための各種商品(アプリなど)

 

孤独は「問題」という面もありますが、「ライフスタイル」という捉え方もされつつあります。

この流れは今後も加速することが予想されますので、参入障壁の低いうちにビジネスを立ち上げることがお勧めです。

AIがもたらす「孤独市場」の新しい可能性

この「孤独市場」にもAIが新しい可能性をもたらすと考えられます。

 

従来のビジネスモデルでは、人と人との直接的な接点を重視してきました。

しかし、生成AIの発達により、人間らしい対話や共感が可能なデジタルパートナーが現実のものとなっています。

 

たとえば、一人暮らしの高齢者向けのサービスを考えてみましょう。

従来は「話し相手がいない」という課題に対して、ヘルパーの派遣やデイサービスなど、人的リソースに依存した解決策が主流でした。

しかし今、インハウスAIを活用することで、24時間365日、その人に寄り添い続けるデジタルパートナーを作ることができます。

 

このAIは単なる会話相手ではありません。

その人の生活リズム、健康状態、趣味嗜好を学習し、きめ細やかなケアを提供できます。

たとえば、食事の時間になると好みに合わせたレシピを提案したり、服薬の時間を優しく知らせたり、昔の思い出話に耳を傾けたりする。

そんな、まるで「デジタルな家族」のような存在を創り出すことができるのです。

 

また、選択的に独身生活を送る人々向けには、アプリAIを活用した新しいサービスが考えられます。

たとえば、その人の趣味や関心事を深く理解し、カスタマイズされた学習コンテンツを提供するAI。

あるいは、その人の創作活動やプロジェクトのパートナーとして、アイデアを出し合い、フィードバックを提供するAI。

これらは、「質の高い独習」や「創造的な孤独」を支援する新しい形のサービスとなります。

 

「分身AI(アバターAI)」の可能性にも注目したいですね。

たとえば、独居老人の方の分身AIを作成し、離れて暮らす家族とのコミュニケーションを補助する。

あるいは、亡くなった配偶者の思い出や価値観を学習したAIを作成し、その人らしい対話や助言を提供する。

ただし、これらは「深い人間理解」と「倫理的な配慮」がとくに必要となる領域です。

 

重要なのは、これらのAIソリューションは、決して人間的な温かみや実際の人とのつながりを否定するものではないということです。

むしろ、人と人とのリアルな関係性を補完し、より豊かにする可能性を持っています。

 

「孤独市場」に参入を考える事業者の方々には、ぜひAIの可能性も視野に入れていただきたいと思います。

人間の感性とAIの能力を組み合わせることで、従来にない価値を提供できる可能性が広がっているからです。

 

AIコンサル工房では、このような新しいビジネスの可能性を、皆様と一緒に探求していきたいと考えています。