「アップサイクル」という言葉をご存知でしょうか。
環境とかサステナビリティとか、そういう分野でよく聞く言葉なので、SDGsに関心のある人などはよく知っているでしょう。
あるいは
- ファッション
- アパレル
- フードロス
- プラントベース
- ビーガン
あたりの界隈でもよく聞きます。
ものを捨てないで再利用することを「リサイクル」といいますが、「アップサイクル」は「リサイクル」をさらに一歩進めたもの。
本来であれば捨てられるはずのものに、デザインやアイデアなどの付加価値を加え、新しい何かにアップグレードして再生することを「アップサイクル」といいます。
- 古くなったソーラーパネルをテーブルに作り変える
- 擦り切れたタイヤをカバンに作り変える
- 食品廃棄物を堆肥にする
などもアップサイクルに含まれます。
じつは「コンテンツ」のようなものにもアップサイクルの考え方は通用できます。
今回はそういう話。

じつは「コンテンツ」のようなものにもアップサイクルの考え方は通用できます。
たとえば料理雑誌などを定点観測(※)するとよくわかるのですが、
- 1年前の同じころとよく似た特集
- 1年前の同じころとよく似たレシピ
がしばしば出てきます。
ようするに、1年前の企画が再利用されています。
ただし、ここが重要なのですが、1年前の記事がそのままコピペされることはありません。
1年前の企画を1年後にあらためて見ると、「陳腐化」して見えることが多い。
したがって、そっくり同じものは使えません。
あれやこれや手を加え、今年風に
- 新しい特集
- 新しいレシピ
に見せないと使えないのです。
(※)定点観測
同じ場所を定期的にチェックして変化を観察すること。
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メールマガジンなどを定期的にずっと出しているとしましょう。
たとえば週1で出し続ければ、4年くらいやると200通ほどになります。
そのころには、過去に配信した原稿の多くが、再利用されないままPCの奥に眠っている状態になるんですよね。
かなりの量です。
なんとかうまいこと「アップサイクル」したいものです。
そこで過去の記事をリライトし、コラム記事として note などに出そうとするのは、自然な発想です。
また、昔書いた記事をあらためて書き直し、最新のメールマガジンに載せる、というのも立派な「アップサイクル」です。
ただし、ここが重要なのですが、過去の文章をそのままコピペしても、アップサイクルにはなりません。
不思議なことですが、1年以上経過した過去の文章は、どこか「陳腐化」して見えるんです。
情報が古かったり表現が古かったりします。
情報が古いというのはもちろんそうなのですが、表現もなんとなく古くなっています。
したがって、そのままコピペしても、使いにくい。
あれやこれや手を加えて、新しい文章にアップグレードしないと使えません。
(過去の記事をあとで読むと、恥ずかしく感じることもよくあります。ここでいう”陳腐化”と関係あるのかは不明です)
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とはいえ、ゼロから新しいものを作りだすよりも、過去のものをアップサイクルするほうが、効率は良いですね。
活かせるものは残して使いたいものです。
もし、過去に書いたメールマガジンやコラムのコンテンツが再利用されずに溜まっている場合は、それを
- 電子書籍に作り変える
- 講座に作り変える
などしてみるのも、良いアップサイクルです(コンテンツの2次利用。リパーパシングともいいます)。
逆に、過去に作った電子書籍のコンテンツがある場合などは、それを
- メールマガジンに作り変える
- 講座に作り変える
といったことができます。
(これも2次利用)
検定試験などに作り変えてみるのも悪くない考えです。
くりかえしますが、「アップサイクル」と「リサイクル」は同じではありません。
過去のものをそのままコピペするのは「リサイクル」ですが、多くの場合、コンテンツのリサイクルは陳腐化します。
つまり、価値が下がります。
陳腐化しないよう、価値があがるように手を加えるのが「アップサイクル」です。
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むろん、このアップサイクルの考え方は動画コンテンツにも当てはまります。
動画配信をしている人も、1年前の作品を振り返ると「陳腐化」を感じることが多いようです。
なぜなら、情報の鮮度が落ちるだけでなく、制作技術が向上して過去の動画が技術的に見劣りしたり、配信者自身のキャラクターや表現スタイルが変化したりするからです。
また、視聴者の期待レベルも年々上がっていくため、以前は受け入れられていたクオリティでも、現在では不十分と感じられることもあります。
動画クリエイターの多くは過去コンテンツを効果的に活用するために、様々なアップサイクル手法を取り入れています。
単に古い動画を再アップロードするのではなく、
- 古い動画を再編集して新しい情報を追加する
- 過去のテーマを現代の視点から再解釈した新しい動画を作る
- 複数の関連動画をまとめて総集編として提供する
- 視聴者からのフィードバックを取り入れて内容を発展させる
といった工夫をします。
さらにメディアの形式を越えたアップサイクルも効果的です。
たとえば、
- 動画コンテンツを文字起こしして編集し、SEOを意識したブログ記事に変換する
- 複数の関連動画を体系化して、ワークシートや実践課題を追加した有料講座に発展させる
- 動画の音声部分をポッドキャストとして再利用する
- 重要なポイントを抽出してインフォグラフィックやスライド資料に変換する
- 動画内容を深堀りしてより詳細な電子書籍やPDF資料を作成する
このようなクロスメディア展開は、異なる情報消費習慣を持つ人々にリーチできるだけでなく、一度作ったコンテンツの価値を最大限に引き出せる効率的な方法です。
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アップサイクルの醍醐味は、単なる再利用ではなく「価値の向上」にあります。
古いコンテンツに新たな視点や情報を加えることで、オリジナルよりも価値の高いものが生まれます。
また、メディア形式を変えることで、元のコンテンツでは届かなかった層にもリーチできるようになります。
ゼロから新しいコンテンツを作るのは膨大な労力が必要ですが、既存のものをアップサイクルすれば、比較的少ない労力で大きな成果を得られることも魅力。
過去の作品を眠らせておくのではなく、常に新たな形で息を吹き込み、その価値を高め続けることを考えていきたいものです。

「アップサイクル」は、AIとの相性が良さそうです。
旧コンテンツの「陳腐化」という課題に対して、AIはスピーディーな解決策を提供してくれますし、最近はその品質もどんどん向上しています。
たとえば、過去に書いたメールマガジンの記事を活かしたいとき、単純なコピペでは「古さ」が目立ちますが、ChatGPTなどの生成AIを活用すれば、現代的な表現へとスムーズに変換できます。
記事の本質を保ちながら、時代遅れの表現や例えを最新のものに置き換えてくれます。
多くの場合、同じ品質なら「AI作」のほうが制作時間は短く、同じ制作時間なら「AI作」のほうが仕上がりが良いです。
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「インハウスAI」の活用が特に効果的です。
インハウスAIとは、あなたのビジネスや過去のコンテンツを学習したAIのこと。
これを活用すると、単なる表現の更新を超えた、深いレベルでのコンテンツ再生が可能になります。
たとえば、過去3年分のブログ記事やメールマガジンをインハウスAIに学習させておけば、
「あるテーマについて、過去記事の該当部分をまとめ、新しい特集記事として再生する」
といった編集も可能になります。
AIがテーマ同士の関連性を見出し、過去コンテンツの断片を新しい文脈で再構成してくれるからです。
ある料理教室では、過去5年分のレシピとコラムをインハウスAIに学習させました。
すると、さまざまな切り口で過去のレシピを再編集した電子書籍を短時間で作成できるようになっています。
AIによるコンテンツの「アップサイクル」です。
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「コンテンツのアップサイクル」は、とくに個人事業主や小規模ビジネスにとって大きなメリットがあります。
なぜなら、大企業と違って、小規模ビジネスではひとりで多くの役割をこなさなければならず、ゼロから新しいコンテンツを次々生み出すというわけにはいかないからです。
そこで、AIを活用したアップサイクルに注力します。
たとえば、過去のセミナー録音をAIで文字起こしし、それを元に記事やメールマガジン、SNS投稿まで一気に作成する。
AIが異なる媒体向けに表現を調整してくれるので、同じ内容でも飽きられません。
ここで1つ注意点があります。
AIは優秀な「編集者」ではありますが、「素のままのAI(※)」では、あなたの「個性」や「専門知識」までは再現できません。
そのためには、
- AIが生成した内容をあなたがチェックし、微調整を加える
- 「個性」や「専門知識」を学習したインハウスAIを活用する
どちらか、または両方の工夫が必要です。
(※)素のAI(素のままのAI)
提供されたそのまま、サインアップしたすぐの状態のAI。
特定の目的や専門性はなく、広く汎用的な動きをします。
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AIの力を借りれば、「古いコンテンツを今風に書き換える」というシンプルなアップサイクルを超え、いわば「大きく違うものに生まれ変わらせる」こともできます。
もちろん人間にもできます。
しかしAIは、これを早く大量にできます。
たとえば、過去のブログ記事を「AI時代のビジネス戦略」というまったく新しいテーマの記事に生まれ変わらせるとか。
これは単なる書き換えではありません。
原材料から新しい価値を創造する「リインカネーション(生まれ変わり)」と呼べるでしょう。
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「アップサイクル」という概念は、捨てられるはずのものに新たな命を吹き込むという点で、創造的です。
そして今、AIという新しいパートナーを得たことで、この創造性はさらに広がりを見せています。
かつては「古くなったから使えない」と思われていたコンテンツも、AIとの協働によって新たな輝きを放つ可能性を秘めています。
ただし、「AIに丸投げ」という姿勢ではなく、「AIと共に創る」という姿勢が大切。
最後に1つ、具体的なアイデアをご提案します。
手元にある過去のブログ記事やメールマガジンなどから、特に反響の大きかったものを5つほど選んでみてください。
それらを「現代的な視点で統合してください」とAIに依頼してみましょう。
そこから生まれたコンテンツを起点に、さらなる展開を考えてみるのです。
変化の激しい時代だからこそ、「コンテンツのアップサイクル」という考え方は、ビジネスオーナーにとって大きな武器になるでしょう。
AIという新しいパートナーとともに、埋もれたコンテンツ資産を、最大限に活かしていきたいものです。
AIコンサル工房では、このような「AIを活用したコンテンツアップサイクル」のためのノウハウを、文系の視点からわかりやすくお伝えしています。
技術的な専門知識は必要ありません。
必要なのは、変化を恐れず、新しい可能性に心を開くことだけです。