あなたの職場の「AI地図」はどうなっている?

職場でAIを使っていますか?

もしくは、使おうとしていますか?

 

ChatGPTなどの生成AIが日常に浸透し始めた今、職場での活用は進んでいるように見えて、実は複雑な様相を呈しているようです。

熱心に活用する人がいる一方で、距離を置く人もいる。

さらには表向きと本音のギャップも…。

 

私たちの職場には、AIとの向き合い方によって見えない「地図」が形成されつつあると言えます。

今回は、ChatGPT教室での講師と生徒の対話から、職場におけるAI活用の実態と、それを取り巻く人間模様について考えてみましょう。

あなたの周りの人々は、そしてあなた自身は、この「AI地図」のどこに位置しているでしょうか?

ChatGPT教室でのひとコマ:講師と生徒の対話から~

 

「職場でのAI活用について悩みがあるんです」

 

ChatGPT教室の終了後のOさんの話です。

Oさんは中堅企業にお勤めの方です。

 

「どんな悩みですか」

 

「職場でChatGPTを使っているのは私だけみたいで…同僚に話しても『難しそう』とか『怪しい』とか言われましてねえ。実際使ってみると便利だし、面白いし、みんなに教えたいんですけどねえ」

 

「なるほど。AIを使う人と使わない人の間に、ある種の分断が生まれているわけですね」

 

「私は熱心に話すんですけど、うちの同僚の反応は完全に二極化していますねえ」

 

「最近、そういった職場での『AI態度』について面白い調査結果を見たんです。どうやら私たちは5つのタイプに分かれているらしいですよ」

 

「5つのタイプ?」

 

「はい。Oさんのような方は『伝道師』ですね。私が勝手に名づけてみたんですが」

タイプ 特徴
伝道師 AIを積極的に使い、周囲に広めようとする
拒否 AIの利用に否定的
様子見 AIに興味はあるが距離を置く
応援団 AIを前向きに評価するが自身は使わない
むっつり 表向きは無関心または批判的だが、実は密かに使いこなしている

「伝道師…確かにそんな感じですねえ(笑)」

 

「ChatGPTなどのAIを積極的に使い、周りにも熱心に広めようとする。『便利だよ、使ってみて!』という感じで。Oさんって、そうなんでしょう?」

 

「それです。でも、みんな反応が違うんですよね」

 

「同僚の方々は、どんな反応をしますか」

 

「えっと…ある人は否定的で『AIなんて反則だ』って言いますよ。なんですか、反則って(笑)。別の人は『なにやら怖い』って言って距離を置きます。あと、『へえ、すごいね』って言いながらも自分では使わない人もいます」

 

「なるほど。それぞれ異なるタイプですね。私の分類だと『拒否』『様子見』『応援団』といったところでしょうか」

 

「他にもタイプはあるんですか?」

 

「もう1つのタイプは『むっつり』です。表向きはAIについて特に言及せず、時には批判的な意見も述べるかもしれない。でも実は密かにAIを使いこなしているという…」

 

「死語でしょう、『むっつり』なんて。まあいいや、それ、うちの部長ですよ。私がChatGPTの話をするとね、『そんなの頼りにしちゃダメだ』って言うんですけど、彼の書類がやたら完璧なんですよね。不自然によくできてる」

 

「なるほどね。どの組織にも『むっつり』は存在するようです」

 

「なるほど…なぜ隠すんでしょうねえ?」

 

「理由はいろいろあるでしょうね。『AIを使ったと言うとサボっていると思われるから言いたくない』『自分のアイデアじゃないと思われるから言いたくない』という恐れもあるでしょう。また、『優秀に見えるテクを他人に教えたくない』という競争心もあるかもしれません」

 

「確かに。でも、なんだか不健全な感じがしますねえ」

 

「そうですね。もっとオープンにAIについて話せる組織文化が理想的ですが、現状はなかなか難しいんでしょう。職場によっては、AIの活用が『裏技』や『チート』のように見られることもありますし」

 

「5つのタイプって、これからどう変わっていくと思います?」

 

「いい質問です。そうですね…私の観察では、『伝道師』と『むっつり』が徐々に増えていく傾向があります。AIの使いやすさが向上し、成功体験を持つ人が増えているからです」

 

「『拒否』はどうなりますか?」

 

「拒否はずっと一定数いると思います。でも、その中身は変わっていくでしょう。今の拒否の多くは『よく分からないから』という理由ですが、将来は『AIの限界を知っているから』という理由に変わるかもしれません」

 

「なるほど…『様子見』は?」

 

「『様子見』の多くは、環境次第でどちらにも動きます。周りで『伝道師』が増えれば使い始めるでしょうし、『拒否』が強ければそちらに引っ張られる。だから、Oさんのような『伝道師』の影響力は大きいんですよ」

 

「私も影響力がある、ですか?」

 

「ええ。Oさんのような方が、楽しそうにAIを使いこなしている姿を見せることで、『様子見』が『なんだか面白そうだな』と思い始める。そこが変化の始まりです」

「でも、どうしたら『拒否』を説得できますか?」

 

「まず、説得しようとしないことが大切かもしれません」

 

「え?」

 

「はい。『AIを使わないと時代遅れだ』というプレッシャーは逆効果になります。むしろ『これ、楽しいよ』『面白いよ』という気軽さを伝える方が効果的です」

 

「たしかに私も最初『便利だから』よりも『面白いから』使い始めました」

 

「そうそう、人は義務感より好奇心で動くものです。『拒否』の中には、AIについて倫理的な懸念を持っている人もいます。そういう方には『その懸念はとても大切だと思う』と敬意を示すことが第一歩です」

 

「理解します。では『むっつり』はどうすれば…」

 

「彼らはすでにAIの価値を知っているわけですから、説得の必要はないでしょう。むしろ『安心して公表できる環境』を整えることが大切でしょうね。『AIを使っています』と言っても不利にならない職場文化を作ることですね」

 

「なるほど…でも私にそんな力はないですよ」

 

「いいえ、Oさんのような『伝道師』が『AIは便利だけど、限界もあるよね』と冷静に語ることで、少しずつ変わっていきます。熱狂と冷静さのバランスが大切なんです」

 

「AI使いこなす人は、皆さんどんな人だと思いますか?」

 

「私の観察では、AIを上手に使う人は『好奇心が強い』『何度も試行錯誤できる』『失敗を気にしない』という特徴があります。要するに、遊び心を持って接している方が多いですね」

 

「遊び心…確かに私、AIを『究極のオモチャ』だと思ってます(笑)」

 

「同感です。その感覚、いいですね。試しに、職場でも『これ、面白いよ』という軽い感じで話してみてはどうです? 『すごく便利だから使うべき』ではなく『ちょっと試してみたら意外と面白かった』というトーンで」

 

「明日からそうしてみます。ところで、うちの会社にはAIについてのガイドラインがないんですが…」

 

「ガイドラインがないと『むっつり』が増えて、オープンな対話が難しくなります。でも、まずは小さな成功事例を積み重ねて、『AIってこんな風に役立つんだ』ということを示していくのがいいかもしれません」

 

「分かりました。5つのタイプを意識しながら、明日から気軽に話してみます」

 

「そうですね。あなたが『伝道師』としてAIの楽しさを伝えることで、少しずつでも職場の文化は変わっていくはずです」

 

「ところで、『拒否』、『様子見』、『応援団』、『伝道師』、『むっつり』…で思ったんですけどねえ」

 

「なんでしょう」

 

「先生は、あんまりネーミングのセンス、なさそうですねえ」

 

(この記事は、ChatGPT教室での対話をもとに構成されています)

【あとがき】

この記事で紹介した「職場のAI地図」と5つのタイプ分けは、健康行動科学などで用いられる「行動変容ステージモデル」と似た構造を持っています。
生活習慣病予防などの分野では、人々の行動変容への準備状態を「前熟考期」「熟考期」「準備期」「実行期」「維持期」のように分類し、それぞれの段階に合わせたアプローチを行います。
AIの受容においても同様に、「拒否」「様子見」「応援団」「むっつり」「伝道師」という各段階に合わせたコミュニケーションが効果的です。
新しいテクノロジーの導入も、健康行動の変容も、人間の心理と行動の変化プロセスという点では共通しているのかもしれません。
職場でのAI活用を進める際には、相手のステージに合わせたコミュニケーションを心がけてみてはいかがでしょうか。